*この記事は2014年に書かれたブログを、より分かりやすくなるよう2020年に加筆修正を加えました。
靭帯について昔少しお話ししましたが、今まで「靭帯」を主役にしてお話ししたことはなかったの。
2013年8月からほぼ毎日更新しているのに靭帯、という基本的な事をお話ししていないなんて!!
という事で今日は基本にかえってダンサーが知っておきたい「靭帯」を見ていきましょう。
靭帯とは何か?
靭帯とは骨と骨を結ぶ紐の束のようなものだと考えましょう。
筋肉に繊維があるように、靭帯も一本のコラーゲンの繊維ではなく、束になった強いロープです。
靭帯にはあまり弾力性がなく、そう簡単には伸びないように出来ています。
靭帯の仕事、それは骨と骨をしっかりと結ぶこと。
そうすると骨格が安定しますから、体全体が安定することになります。
靭帯が長ければ骨と骨を結んでいる紐が長い、という事になるので関節の可動域が広がります。
けれどそれはいいことだらけではありません。
生まれつき靭帯が長い=体の柔らかいダンサーがケガをする率は非常に高く、
彼らは常に強化エクササイズを行わなければいけません。
それってすごく大変な事。
だって筋肉は使わなければ失われてしまうわけで(消えちゃうわけじゃないけど、弱くなる)、
遺伝的に体が柔らかい人は、シーズンオン、オフに関係なくトレーニングをして関節を守らなければケガに繋がってしまうのです。
靭帯は伸びる?伸びない?
靭帯が伸びるか伸びないか、についてはたくさんの議論がインターネット上を飛び交っています。
怪我した時に、「靭帯を伸ばした」という人がいるでしょう?
それは靭帯が物理的に長くなっているのか?それとも靭帯の一部が損傷しているのか?
それは私には分かりません。
2013年の11月にUniversity Hospitals Leuvenは膝にある新しい靭帯を発見しました。
しかもこの靭帯そんなに小さくありません。
膝の手術が当たり前の21世紀に入っても新たな発見がある体。
ですから、靭帯が伸びようが、伸びなかろうが、私には関係ありませんし、ダンサーにも関係ありません。
ですから忘れちゃってください。
大切なのは、靭帯を切ってしまったら(全てだろうが、一部だろうが)元には戻らない、ということ。
完全断裂であれば手術する必要がある人もいますし、部分断裂だったら手術をしないでこの周りの筋肉を鍛え、サポートさせる、という人もいます。
(毎回捻挫の度に手術しなくてよいってことね)
靱帯が怪我しやすい時って?
捻挫など靱帯の怪我をした場合、伸びたのかOR切れたのか論争をする必要はダンサーにないし、
何パーセントの断裂があったのか?などは治療家などプロに任せてください。
ただ、どういう時に靱帯の怪我をしやすいか?という事を知っておくのは、
ケガ予防のためには大事だよね。
関節が伸びている時、靭帯はピーンと張っています。
そしてこれが関節を安定させ、脱臼しないようにしてくれているのです
(もちろん関節包だとか、筋肉だとかというその周りの組織も助けてくれますが)
関節が曲がっている時、靭帯は緩みます。
ただ、特に重力に反して曲げよう、動こう、と筋肉が動きを作ってくれている場合、筋肉がサポートもしてくれています。
よって、関節が一番弱いとき、というのは
- 関節が中途半端に曲がっている時
- 自分の力でなく、脱力(受動的に)関節を曲げている時
となるのね。
どういう時に起こりやすいかって?
動きの途中や、バレエの先生がいう「関節に乗っかっている」時、そして静的ストレッチしている時。
- スタミナ不足でパとパの間のコントロールがしっかりできなかった膝
- ジャンプの着地で足のコントロールが出来ず、床と自分の着地との衝動に挟まれた足首
- 静的ストレッチで地面から浮いている骨盤を無理やり下に押し付けた股関節
なんていう時に、靱帯の怪我をする可能性がすっごく高くなるのね。
(上にある3つ、すべて「ダンサー自身が」防げた事よ?)
靱帯は体重を支え、骨を支えるための頑丈なつくりで出来ているため、ちょっとやそっとじゃ大けがにならないんだけど、
歳月をかけて少しずつ、少しずつ断裂していき(覚えてる?こいつら元に戻らないんだからね)、
軟骨にかかるプレッシャーが増えて、半月板損傷などの軟骨すり減り系の怪我になり、
現役で踊っている時は筋肉がサポートし、舞台のアドレナリンでどうにかなるけど、
指導者になったら痛みがひどくなる(覚えてる?筋肉は使わないと失われるっていうの)。
多くのバレエ教師の皆様に、見覚えのある痛みだと思いますけどどうでしょうか?
もう年だから…ではなく、正しいことをやってこなかったツケは時間が経って初めて見えてくるときもあるんですよ。
でも人生100年時代と言われますからね、40、50で痛いのは、残り半分の人生痛みと一緒に生活するのは嫌だよね。
だからね、子供達には正しいことを徹底的に指導しなきゃいけないんですよ。
あ、話がずれた。
ストレッチと靱帯
この前カエルストレッチの話をしましたから、それを例にとりましょう。
上向きガエルだろうが、下向きガエルだろうが、カエルストレッチでは
- 膝関節が曲がっています。
- 股関節も曲がっています。
という事はこれらの関節の周りの靭帯は緩み、関節はいつもよりも大きく動けるようになります。
その上から押してごらんよ、どうなると思う?
すごい勢いでプッシュしない限り、もしくは椅子の上でのスプリッツみたいに全体重がかからない限り骨折の可能性は少ないけれど(逆に言うと、そういう時は骨折もあり得る)
- 脱臼
- 靭帯損傷
- 軟骨や関節包など関節を守る組織
の怪我につながる可能性が大きいという事。
肩関節と股関節が似ている、という話をしましたね。
肩関節とひじ関節を股関節と膝関節にに置き換えてみてみると…
カエルストレッチ+先生がストレッチの為におしりを地面に押し付けているってこんなことしているんですよ?
見ているだけで痛くないですか?
ストレッチすべき組織は筋肉であり、靱帯じゃないです。
ストレッチだってしっかりと勉強した人が指導すべきなんだけど、その話は教師が知っておきたい柔軟性講座でたっぷりお話していますので割愛。
まとめ:ダンサーにとって靱帯って何?
- 関節を守ってくれるもので大事です。
- ケガするシチュエーションというのがありますので知っておいて。
- 舞台での怪我は避けられないかもしれないけれど、上手になりたくてやっているストレッチで自分の首を絞めないように。
Happy Dancing!