バレエが上手くなりたい理由は競争心から来ていますか?
それとも向上心から?
周りに勝ちたいから練習するのと現在の自分より成長したいから練習するのには違いがあります。
今回は競争心と向上心の意味を考え、コンクールを例に当てはめてみました。
ダンサー本人はもちろん、先生方や保護者の方にも聞いてもらいたいポッドキャストです。
聞きたい人はこちらから(読みたい人はスクロールしてね)
みなさんこんにちは、DLSポッドキャストへようこそ、佐藤愛です。お元気ですか?
ダンサーズライフサポート、通称DLSは”生徒の安全と将来の健康を第一に考えるレッスンを「当たり前」に。”を合言葉に、
元オーストラリアの政府認定バレエ学校専属セラピスト兼、セミプロフェッショナルレベルのダンサー向けエクササイズ、解剖学とケガ予防のクラスの講師を担当してきた佐藤愛が、
大好きなバレエを心ゆくまで続けたいダンサー、バレエの先生へ情報をお届けしています。
今月のポッドキャストでは、「似て非なるものシリーズ」をお送りしています。
似ている言葉、同じような意味で使われるシチュエーションがあるかもしれない言葉だけど、意味がかなり違うよ、という話。
エピソード459では努力と無理は違うということについて、
エピソード460ではルーティーンと頑固は違うということについてお話しました。
すでに聞いてもらえましたか?
私はこのシリーズのポッドキャストを作っていてとても楽しいのですが、皆さんにも楽しんでもらえていますでしょうか?
今まで努力だと思っていたことは、無理だったと気づいた人、
そして自分では気づかなかったけど、頑固だったかも。昔ながらの習慣に疑問を抱かなかったかも。
と気づいた方は、DLSの教師のためのライブラリで勉強するのをお忘れなく。
1クラス単位で勉強もできますし、3か月アクセス、一番お財布に優しい1年アクセスもあります。
せっかく頑張ってきたのに、無理していたため体や心が壊れてしまった、とか、
何も疑問を抱かずに行っていた習慣のために、痛みが取れなかった、などならないようにするためにも、
最初は知識のアップデートが必要です。
コンピューターやスマホを考えてみましょう。
コンピューターの見た目、スクリーン、キーボードがアップデートされるわけではありませんが、
問題が見つかるたびに、そして新しいシステムが作られるたびに、
ソフトウエアのアップデートが行われますよね?
ソフトウエアとは、知識のことです。
古い機種で、情報も古いからと使い捨てされないためにも、
私たちは常にアップデートをしていかないといけないと思いませんか?
バレエの先生向けの内容ではありますが、自分がケガをしている大人バレエトレーニーを含むダンサー、保護者の方もお使いいただけます。
「DLS 教師のためのライブラリ」とネット検索してもらっても情報が出てくるとは思いますが、
面倒な人や、正しい情報にアクセスしているか心配な人は、hello@dancerslifesupport.comにメールしてくださっても、
インスタの @dancerslifesupport にDMしてくださっても大丈夫です。
さて、今週の似て非なるものシリーズのテーマは競争心と向上心についてです。
これもまた、ジューシーな話ができそうですよね。
早速言葉の定義から見ていきましょう。
競争心とは他人に負けまいと張り合う気持ち、他に張り合って勝ちたいと思う気持ちという意味だそうです。
では向上心とは何か?
辞書によると、現在の状態に満足せず、よりすぐれたもの、より高いものを目ざして努力する心だそうです。
すでに気づいた人も多くいると思うのですが、競争心とは周りと比べる心、向上心とは現在の自分より成長したい心だと言い換えることができますね。
バレエ界で競争する場所、といったらコンクールがトップで躍り出てくるため、今日はコンクールを例にとっていきましょう。
コンクールに出る理由は、同じ年齢の子たちがうちのスタジオにはいないので、向上心を育てたいから、という先生が多くいるのを知っています。
でも育てているのは本当に向上心、もっと上手になりたいんだ、という気持ちでしょうか?
それとも競争心、他人と自分を比べ、負けたくない、勝ちたいと思う気持ちでしょうか?
チャレンジすることは大切です。
同じ年代の子たちに感化されることも、特に小さなスタジオだったら貴重な経験になります。
でも、それって別に競争しなくてもできることなんですよ。
順位を発表しなくても、試験ができるように。
コンクールに出なくても、バリエーションが練習できるように。
相手と戦ったり、蹴落とさなくても、自分を育てることができるし、
誰かが自分の中で満足した踊りができたと同時に、あなたが自分の力を発揮することができます。
どちらか、ではなくて、同時に。
長年DLSを通じてお伝えしていますが、バレエ団とは会社です。
みんなで作品を作り、舞台を届けることを仕事としています。
もちろん、バレエ団員がお互いを切磋琢磨していることでしょう。
ゲストダンサーがほかのカンパニーから来たら、感化されることでしょう。
でも、集団生活ができないような人間を育てることがダンサーを育てることではないというのは、指導者はしっかりと覚えておかなければいけません。
保護者にも同じことをお伝えしたい。
- OOちゃんはもう3回転できるじゃない
- XXスタジオでは8歳からトウシューズ履いているのよ
というような比較は、本当に子供たちを成長させてくれるのでしょうか?
やる気を出させるために、はっぱをかけるために言っているのかもしれないけど、
本人の気持ちは、本人にしか決めることができません。
昔のバレエ漫画だけでなく、経験談などで、トウシューズの中に画びょうを入れるとか、
先輩から卑劣ないじめを受けたなどの話を聞いたことがあるかもしれません。
これって、性格が悪い子たちがやっているわけでも、
バレエで残るためには嫌な奴にならないといけないというわけでもないと私は思います。
だって、元々おとぎ話や昔話の役になり切って、観客を感動させたいと思う人たちだよ?
本当に、人を傷つけたいと思うような人が選ぶ職業だとは私は思えないんです。
カツラ着けて、お姫様のふりをして、妖精の羽がついた衣装を、大人が着てお仕事するんだから。
ただ、彼らにとってバレエは競争で、相手を落とすか自分が落とされるかというよくわからない危機感があって、もしくはそのような環境で育てられてきて、
そのレンズでしか物事を考えられないような大人に育ってしまったとしたら?
自分が上達するほう、つまり向上心ではなく、どうやって相手に勝つか?の競争心だけでしか同僚、友達を見ることができなかったら?
そんな人が、アーティストとしての生活ができるんでしょうかね?
競争がなくなったとたん、踊る意味がなくなってしまった人も多くいるのではないでしょうか?
スタジオの先輩や、雑誌でよく見た名前のダンサーなど思い当たる人はいませんか?
何度もになりますが、チャレンジ、挑戦することは大切です。
コンクールだけが競争心を育てるわけでもありません。
上手く使えば、コンクールはとてもいい勉強の場所になるはずです。
どうやって、コンクールを生徒にとっての良い勉強の場にするか?の部分は、
ライブラリのシークレットライブにするか、新しいクラスにするか考え中ですが、
皆さんが手に取って、使いやすい形にしてお送りする予定です。
でも、向上心と競争心は違うということ。
これは忘れないでください。
最後に、競争心の問題が垣間見えたエピソードを1つ。
エクササイズの先生からの質問で、どうしたらよりよいクラスを提供できるか?をお話していました。
そこで、参加者の知りたい人たちに感想をきいたら?とアドバイスをしたところ、
「そうですよね、なんだか、参加者にジャッジされているというか、参加者VS私、の気がしていました」と彼女が言っていました。
競争心って、コンクールで負けない!と思うだけでなく、自分がけなされるんじゃないか、下に見られるんじゃないか、相手よりも勝たなければいけないのではないか?という気持ちにさせてしまいます。
周りからの意見やフィードバックは、攻撃のように聞こえてくるし、
グループで一緒に作り上げようというアクティビティを行ったときには、自分が一番いいアイデアを出さなければ、と鼻息荒く、相手の意見を聞く耳を持てなくなってしまい、
仲間の成功を心から喜ぶことができなくなってしまいます。
もしかしたら、そういう環境で自分が育ってきて、辛い思いをしてきた人が、
ほかの子たちと競争させて、自分の子供が1番になれば、負ける思いをしなくて済むから一番いいのではないか?と考えてしまう親御さんも出てきてしまうのかもしれません。
バレエママ、とかステージママ、なんていわれる人たちは、自分のかなわなかった競争心の矛先を、ほかの家族に向けているのかもしれませんし、
常に競争しなければいけない、というかわいそうな気持ちの中で生活しているのかもしれません。
競争でしか自分を認められない、周りと比べることでしか自分の価値が分からない。
それって、悲しい人生になっちゃうと思いませんか?
だからこそ、教師、保護者など私たち大人は、子供たちに向上心を伝えてほしいなと思うのです。
ということで、今日のポッドキャストはここまで。
ぜひおうち、スタジオでも競争心と向上心を取り間違えていないかな?
向上心を持ってほしいのに、競争させるような言葉を使っていないかな?
とチェックしてみてくださいね。
Happy Dancing!
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