11月からDLS公認インストラクターコース第二期生(通称小鬼)が必死で勉強しています。
今日はそのグループでもお話した、指導&サポート、と代行サービスの違いについて書いていきたいと思います。
バレエの先生達に向けて書いていますが、保護者の皆さんも同じことが言えると思うし、指導&サポートを受ける側になるダンサーも知っておいてほしい事です。
自分のシチュエーションに当てはめて聞いてくださいね。
指導とサポートとは?
指導者という言葉はDLSでもたくさん使うのですが、意味を再確認してみましょうか。
(昔、暇なときに辞書を読むのが好きだった少女愛は、今でも定義が大好きです)
いつも通りデジタル大辞泉で見てみると、
ある目的・方向に向かって教え導くこと。
と書いてあります。
柔道の”指導”はバレエと関係ないのでここでは飛ばしていきましょう笑
DLSの名前にも入っている、サポートとは何でしょうか?
支えること。支持・支援すること。
だそうです。
ということで、
バレエの指導者は、バレエ上達、留学、などその子のゴール、スタジオのゴールに向かって、教え導く人。
バレエ教師を含むけれど、それ以外にもインストラクターや保護者は
ダンサーと彼らの夢を支援する人。
となります。
そりゃそーだ、って?
代行サービスとは何?
では代行サービスとはなんでしょうか?
代行とは、文字通りですが、
当事者に支障があるときなどに、代わってその職務を行うこと。また、その人。
という意味。
ここでのサービスは経済学語の方の
職務としての役務提供
となり、先ほど見てみた意味とは異なります。
よって、
ダンサーの代わりに先生がやってあげる職務
となります。
勘がいい人は、私が言いたいことが見えてきたかな?
本人の学びを代行してあげられない
小鬼たちに話した内容から抜粋しますね。
インストラクターコースは、小鬼たちをサポートするのが仕事の一つです。
でも代行サービスではありません。
さっきの定義と含めてみると、言葉の違いが聞こえるようになりましたか?
先生が何でも助けてあげちゃったら、生徒は成長しないんです。
でもね、それは放っておくのとは違います。
だって、サポートはしないといけないし、指導はしないといけません。
- 道路に出ると事故に合うかもしれないから、お家から出しません!
でもないし、
- 道路に出ると事故に合うかもしれないから、代わりに歩いてあげます
でもない。
だけど、
- 道路は危険だって分かっていながら、自分で学ばなきゃいけないからね、と放っておくのでもない。
道の渡り方
- 車が来ていないかを確認する方法
- ちょっと遠回りかもしれないけど、信号がある横断歩道までの行き方
- を教えてあげると、
- どんな道でも、自分で(ある程度)危険を避ける事が出来ますよね?
これが、指導やサポートだと私は思っています。
周りになんでもやってくれちゃう人がいると、それが当たり前になってしまいます。
勉強でもそうだし、バレエでもそう。
よく、触って生徒を直す先生がいますが、それは時にして生徒の学びを盗んでしまっています。
- ここだとバランスとれるかな?と体の声を聞きながら軸を探すのと、
- ここです、とバランスが取れないたびに先生が走っていて、直してくれるの。
どっちがその子のためになると思います?
ちなみに、インストラクターコースでも教師用マスタークラスなどでも、私は
触ってダンサーを直すことは最後の手段だとお伝えしています。
運動神経のフィードバックルート(脳科学)でも、自分で体験したこと、動きのフィードバックが体から脳に戻る時間が必要だからです。
生徒が成長するために必要なもの
サポートはするけど、代行はしない。
この違いを理解出来ている先生の元にいる生徒は、どんどん上達していきます。
そして人間としてもデキています。
なんでコロナ鎖国の海外にいる私が、「人間としてデキでる」と言い切ることが出来るかって?
2020年に引き続き、2021年もオンラインセミナーを行ってきたDLSでは、
ダンサーサポートとして、毎週行われるエクササイズクラス(ボディコンサークル)もしてきました。
ボディコンサークルでは、毎週クラスの後にフィードバックシート経由で参加者から質問や感想をもらい、
文通みたいに私が返事をする、という事を繰り返しています。
また、毎月最後のクラスでは、ライブでQ&Aがあります。
ということで、今年はいつもに増して、ダンサーの質問に直接答えたり、フィードバックを読む時間が増えました。
そこで、
「今月もクラスありがとうございました」
から質問の言葉が始まる10代の子たちがいるんです。
2015年から教師のためのバレエ解剖学講座をやっていて、大人がこのように質問をスタートする事は多くありません。
そして
- 質問は何で
- 自分でやってみた事はOOで
- こういう事が理解したい
ととても具体的な(大体の場合は、解剖学用語をふんだんに使って!)質問してくれます。
それに対し、私が返信すると
「お返事ありがとうございました。」
のメールをくれる子たちがいるんです。
DLSに来る質問メールの大多数は、私が回答するとそこで終わりな事が多いです。
だから人間としてデキてるなーと感じたんだよ、という長ーい回答でした。
話を元に戻して。
生徒が成長していくために必要なのは、
「どうしてだろ?」と”自分”で思う事。
そして疑問を解決するために”自分で”行動を起こすことなんですね。
ボディコンサークルに参加しているダンサーは、先生に勧められたというのもあると思うのですが、
自分から「内転筋ってどうやって鍛えるんだろう?」「デリエールを強化したいけど、何をしたらいいんだろう?」と考えて行動を起こしてきてくれた子たちなんでしょう。
そして1か月クラスを続けてみて、毎週自分の体と知識に挑戦して、
それでも答えが出なかった事をQ&Aで聞いてくれるんでしょう。
この「自分で行動を起こすこと」が学びであり、上達であるわけです。
代行サービスになっていないか?チェックしてみよう
- 本人が質問する前に回答していないか?
- 本人が調べられる事に手を出していないか?
- 本人がやりたくない事だけど、大切な事だから代わりにやってあげていないか?
この3つはバレエの先生でも、保護者でも、私たちダンサーをサポートする側としても常に自分に問ていきたいですよね。
生徒の悩みを全て解決するのが先生の仕事!
と思い込んでいる人は最初の2つに当てはまりやすいです。
私もバレエ学校で解剖学クラスを担当した最初の2-3年は、
生徒全員が分かってくれなきゃ、指導者としての腕がない事になる!!
と思い込んでいました。
正直言うと、自分が指導しているクラスで、自分が作った試験に落ちる生徒達がたくさんいたら、講師として恥ずかしい、という自分軸の考え方もありました。
生徒の為(この子たちに、解剖学を知ってもらってケガを予防してもらおう!)ではなく、自分のエゴ(点数が出て、指導者としてのメンツを保つ)のためでした。
でも、今日一番最初に見てみた言葉の定義を再度チェックしてみましょうか。
- 指導者=ある目的・方向に向かって教え導く人
- サポーター=支えること。支持・支援する人
これらの職業に、「生徒の悩みを解決する人」という言葉は含まれていないんです。
悩みを解決する「方向に向かって」教え導く人
というのはアリだと思いますけどね、先生は神様じゃないんです(時々神様のようにふてぶてしい態度をとる大先生もいますけど、化石化するのを待ちましょう…)
あくまでも、指導者、サポーターは、スターウォーズのヨーダであり、スカイウォーカーではないわけです。
分かる?
主人公じゃないのよ、私たち。
昔、保護者向けにブログに書いたことのある「失敗するチャンスを奪わない事」という言葉は、
先生たちにも使えると思います。
本人が質問する前に回答してしまう人へ
生徒が、なんだか分からなそうだな、と思ったら
- 音と一緒にやってみる前に、質問ありますか?
- 今の説明で伝わった?
などと相手に回答させてあげましょう。
本人が興味があるんだったら、素晴らしい!
- この本(ブログ)に載ってるよ
- OO筋がカギなんだけど検索してごらん
など、ヒントや道を示しながら、彼らの学習を止めない行動も大切です。
そして、彼らが調べた後に教えてね!と言っておけば、ネットでヘンな情報を検索してきちゃった場合、方向を修正してあげる事も出来ますし、
会話も生まれます。
コロナで生徒が減っているという先生たちの声を聞くことが多くなりましたが、
ただ、スタジオに通って”その他大勢”で踊って帰るのと、先生と1対1で会話ができるの、
どっちの方がやめやすいと思います?
自分の過去の感情お荷物を渡さない
代行サービスになっていないか?チェックリスト最後の
- 本人がやりたくない事だけど、大切な事だから代わりにやってあげる
はちょっと厄介です。
時々、
- 私はこのことを知らなくてケガをしたから生徒に知ってほしい
- 大人になってから大切さに気づいたから、生徒達には早くから知ってほしい
- 留学生活(リハビリ生活)は大変だったから、少しでも楽にしてあげたい
など、自分の過去の感情お荷物を相手に投影してしまう人がいます。
相手を思いやる気持ちは大切ですし
生徒に愛情を注ぐこと、自分の過去から学ぶことは、よりよい次世代を創るために必要不可欠。
そして、自分の体験談ほど強いものはありませんから、仕事のやりがいを感じる事が出来ると思います。
私なんて、100%そうじゃない?
19歳の愛ちゃんが知りたかったことを書いてます、って言っているくらいだからさ。
だけど、いくら状況が似ていたとしても、あなたの生徒(あなたの子供)はあなたではありません。
あなたの感情お荷物を次世代にパスしちゃダメなんです。
なんで?と思ってしまった人のために。
今まで聞いてきた感情お荷物の中には
- 私は背中が硬い事がコンプレックスだったので、生徒達にはエビぞりなど柔軟をたくさんさせていました。
- 私はケガで踊れない事がとても辛かったので、ポワント履かないで、と言えないんです
などがあります。
2人とも、その行動が「ダメ」だと分かっていたのに、です。
(知らなくてやっていた、という場合もありますが、それは指導者として知らないことを指導していた、という事になるので重罪ですね。)
- 私の親は体が硬い事がコンプレックスなので(娘の)私にバレエを習わせ、勿論お家でも毎日ストレッチされられました
- ぽっちゃり系だと自負している母親の元、バレエをやったら細くないといけないからと小学生からダイエットしていました
- 私がO脚だから、バレエを真剣にやっている娘のためにO脚改善の宣伝文句がついている道具をネット上で買いあさりました
これらの例も、全て愛情から来ていることは分かります。
でも感情お荷物は、情報の正誤を冷静に見つめる事ができない眼鏡になってしまうんです。
トラウマが大きければ大きいほど、この眼鏡は分厚くなります。
まとめ:代行サービスにならずに、ダンサーをサポートするために
バレエ教師、という仕事を理解した上で常に
「生徒が成長するために必要なもの」を提供する事を1番のプライオリティにして考えていきましょう。
代行サービスになっていないか?チェックリストは
- 本人が質問する前に回答していないか?
- 本人が調べられる事に手を出していないか?
- 本人がやりたくない事だけど、大切な事だから代わりにやってあげていないか?
だけですから、毎月3分だけ時間をとって確認してみてください。
自分の過去の感情お荷物がある場合、まずはお荷物があることに気づきましょう。
過去のトラウマの場合、カウンセリングが一番ですが日本では敷居も高いと思います。
生徒にお荷物を渡さないための、スタジオでの声掛けや指導の癖、内容を確認する事は、DLSの個別セッションで出来ますので、必要であれば使ってくださいね。
(カウンセリングセッションではありません。指導者としての悩み解決セッションです)
一緒に考えながら、体験しながら、成長していきたい人はボディコンサークルは2022年にも帰ってきますからお楽しみに。
Happy Dancing!